DSM(Design Structure Matrix)の概略
今回は設計手法の1つであるDSM(Design Structure Matrix)について概略をまとめてみます。
他、Design Structure Matrixについての記事は以下
またこの記事は以下を大いに参考にしています。
デザイン・ストラクチャー・マトリクス DSM:複雑なシステムの可視化とマネジメント (Engineering Systems)
- 作者: スティーブン・D・エッピンジャー,タイソン・R・ブラウニング,西村秀和,大富浩一,関研一
- 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: 単行本
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Design Structure Matrixとは
今回はDSM(Design Structure Matrix)の概要について説明します。
成り立ち
昨今、製品やその製品を開発するプロジェクトは複雑化しています。製品は機能・部品が多くなり、プロジェクトは相互に依存した多数のタスクで構成されるようになっています。これら製品やプロジェクトの構造や機能の相互作用を俯瞰するために考案されたのがDesign Structure Matrixです。1970年代にカリフォルニア州立大学のDon Steward教授によって生み出されました。Design Structure Matrixの他にもDependency Structure Matrix や N^2 Matrix という呼び名もあります。
Design Structure Matrixの構造
DSMの典型的な形は以下のようなものです。
N×Nの正方行列です。A~Lには、例えば製品の場合には構成部品が、プロジェクトの場合はタスクが入ります。行列中の●は「相互作用」を示します。例えばこのDSMを製品の相互作用を示しているものだとすると、A行C列目の●の意味は、CがAに作用をしていることを表しています。この作用は基本的に一方通行的なイメージです。C行A列目には●が無いことから、「CがAに作用しているが、AはCに作用していない」ことになります。
DSMの特長
このDSMはグラフ理論でいう有向グラフの隣接行列が基礎になっています。つまりこのDSMは有向グラフで表すことができるのです。上記DSMを有向グラフで表したものが以下になります。
実は先程のDSMをグラフで表現しようとするとこんなに複雑になるのです。このような複雑な相互作用をシンプルなマトリックス形式で一覧できることはDSMの強みです。。
また、もう一つの強みがあります。行列形式で表現することによってグラフ理論と行列演算を駆使した分析が可能になるのです。
例えば先述のDSMにグラフ分割アルゴリズムを使用すると次のように並べ替えることができます。
A~Lをプロジェクトのタスクだとすると、DSMから以下のような情報を読み取ることができます。
- タスク(B,C)はB→Cの直列(Seies)順に実行する。
- タスク(A,K)は相互作用がないため並行(Parallel)して実行しても良い。
- タスク(L,J,F,I)はお互いが密に相互作用しているため、一緒に(Coupled)やってしまうと良い。
- タスク(E,D,H)はお互いが密に相互作用しているため、一緒に(Coupled)やってしまうと良い。
もともとは以下の複雑なグラフだったものから、ここまでのことが読み取れるようになる、DSMの俯瞰・分析の力は注目に値すると個人的には思います(グラフアルゴリズムがすごいだけかもしれませんが)
今回はここまでにします。
なお、今回使用した画像は以下の文献から拝借しました。
Yassine, A. A. (2004). An Introduction to Modeling and Analyzing Complex Product Development Processes Using the Design Structure Matrix ( DSM ) Method. Urbana, (January 2004), 1–17. Retrieved from http://ie406.cankaya.edu.tr/uploads/files/Modeling and Analyzing Complex Product Development Processes Using the Design Structure Matrix.pdf