システムとモデリング

modelica, Julia, Design Structure Matrix, SysML, 他モデリング全般について。

『システムエンジニアリング』を取り巻く問題

注)この記事は下記『System Engineering Analysis, Design, and Development: Concepts, Principles, and Practices』の第2章[The Evolving State of SE Practice- Challenges and Opportunities]の要約になります。

 

前提

・企業のエンジニアの業務の50~75%は多分野に渡る意思決定や問題解決を行うシステムエンジニアリング的業務である。
・にもかかわらず、エンジニアの殆どは『システムエンジニアリング』について正式な教育を受けたことがない。経験から学ぶのみで大変非効率的である。

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どうしてこのような状況になったのか?

・大学・大学院では個別分野の知識を深める一方、複数の領域に跨った問題を解決する技法を学ばない。

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・これは博士号取得者が大学院を卒業してそのまま大学で教鞭を取るケースが多いため、企業で上記のような経験をする機会に恵まれなかったからである。

・また多くの企業では誤った『システムエンジニアリング』の認識を持っているため改善が進まない。

 

誤った『システムエンジニアリング』とは?

・問題に対して要件分析や解空間の検討をほとんど行わないままたったひとつの設計案を設計し、テストし、修正することを繰り返すパラダイム。本書ではSDBTF-DPM Engineeringと称されている。

・この方法ではプロジェクトのスケジュールが限界に達するか、予算が足りなくなるまでテスト→修正→テスト……のループを繰り返すことになる。

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・この方法は手戻りが多く非常に非効率的である。設計案を固める前に要件分析や解空間を実施することで手戻りの少なくなるようにプロジェクトを進めていくのが真の『システムエンジニアリング』である。

 

 

感想

 本書に書かれているのはアメリカの話ですが日本はもっと酷い状況だと思われます。まず現代的な『システムエンジニアリング』について書かれた和書がほぼ存在しません。たまに「システム工学」という名前がついた本が散見されますが基本的にどれも『システムエンジニアリング』とは全く違う内容です。むしろ「プロジェクト・マネジメント」関連の本が『システムエンジニアリング』に近い内容と言っても良いと思います。

 日本の製造業が最近イマイチ活躍できていないのはこの『システムエンジニアリング』に対する理解の不足が原因の一つと感じています。知識の習得には洋書の読解が必須になりますが喰らいついていきたいところですね!